2011年10月10日(月曜日)

クラシックギター部50周年に寄せて

 私が大学時代に素晴らしい時間を過ごした立命館大学クラシックギター部が創立50周年に当たるということで、昨日10月9日、それを記念するイベント『¡F・F・F! Fiesta de Familia Flamenca』が梅小路公園の緑の館イベント室で開かれていました。まぁクラギタ創設50周年のイベントで、何故に部全体ではなくフラメンコ技術部による主催なのか、じゃあクラシック技術部どうした!? 的な思いは少々あるものの、あまり細かいところは敢えて突っ込まずに(笑)。50周年という節目にこういった大きなイベントを開く元気がクラギタにあることは素直に嬉しく感じますし、昨日のイベントにも行きたかったのですが会場は当然京都。今自分は新潟に在住なので、なかなか気軽にお出かけするわけにもいかず、少し羨ましい気持ちともに新潟から眺めていました。

 それでも「せめて」と、当日にかつてのクラギタの機関誌『六弦』が復刻・配布されるということで、そこに向けてささやかながら一筆寄稿をさせてもらいました。昨日、無事にイベントも終わったとのことですので、その寄稿文をこの雑記帳でも公開したいと思います。

『ギター、音楽とともに』

1999年度クラシック技術部長 小林 歩

 この度は素晴らしい時間を過ごした思い出深きクラシックギター部が同好会発足より50周年を迎えるということ、おめでとうございます。やはり自分が大切な時間を過ごしたこの部が、順調に発展して長い歴史を創り上げていっているということは、OBの身としても純粋に喜ばしいことです。その喜ばしさにまかせて今こうして六弦への寄稿を書こうとしているわけですが、もう卒業して10年にもなる私の今の、ギター、あるいは音楽に対する思い、そしてその大学時代から変化について、自分への確認の意味も含めて書いていきたいと思います。

 今あらためて思い返してみると、我ながらクラギタでの活動は非常に一生懸命にやっていました。毎日BOX412に通い、一日何時間もギターを弾いて、定演のためにAアン用の合奏曲をオーケストラ譜から自分で編曲したりして、とにかくギター漬け、音楽漬けの日々を過ごしていました。もちろんそれが苦行などではなく、やって楽しいからこそやっていたわけで、素晴らしい仲間達に囲まれていたこともあり、非常に充実した大学生活を送っていたと思います。ですが、だからこそ、当時思い悩むことがありました。

 それは自分が社会人になった後のことについての悩みでした。今自分はこうして一生懸命ギターの練習をして頑張っているけれど、社会人になって仕事が忙しくなってくると、やはりギターを弾く時間というのはなくなってくるのだろうか、それならば今自分がやっていることに何か意味があるんだろうかという悩みでした。確かに、探せば「自分も昔はギターを弾いていたよ」という人には案外多くお目にかかれます。が、弾き続けている人というのは比率にしてみたらとても少ないのです。ですので、就職活動が始まり、大学から社会への出口がいよいよ実感されるようになってくるとこの悩みはより一層大きくなって行きました。今自分がやっていることは一体何なのだろうと。社会人になってギターが弾けなくなるのなら、今やっていることは結局すべてムダになるのではないかと。

 そんな最中、私が4回生の6月のことでした、たまたまBKCに行っている時に、あるクラギタのOBの方にお会いしました。その方は当時で25年ほど前(だから今から35年くらい前でしょうか?)に立命のクラギタでコンサートマスターをやっていた方で、たまたま仕事でBKCに来て、ギターを弾いている私をみかけたので声をかけてきてくれたというのです。その方は大学卒業後もずっと自分のためだけに演奏し続けているそうで、ギターから発展してリュートや特注の10弦ギターも弾いているそうです。卒業後もずっと、ギターを楽しんで弾き続けておられるその方から名刺をいただき、私も付箋に名前やメールアドレスを書いて交換させてもらいました。後日、その方からすぐにメールをいただきました。その中に、「どうか一生ギターを弾き続けていただければと思います」と書かれていたのを読んで、当時なんだか嬉しくなったのを覚えています。卒業後25年も経っても、ずっとギターを弾き続けて楽しんでいる人がOBの方の中に実際にいらっしゃるのだとわかり、とても元気づけられました。

 そして卒業の時が来て、私は当時のブログの中で「一生ギターを弾き続けてみせましょう。うまいとか下手とかはどうでもいいから。」と宣言しました。ギターに費やしたたくさんの時間を無駄にしないためには、やはりBKCでお会いしたOBの方のように、仕事をしながらでも、細く長く続けていくことだというのが当時の自分の解答でした。

 そして今、卒業してちょうど10年が経っています。現状を正直にお話しすると、仕事が忙しいこともあり、さらに子供が生まれてからは家にいても子供と過ごす時間が増えてきたこともあり、現時点でほぼ3年、ギターをまったく弾いていないブランクが空いています。でも、今はそれでもいいかなと思っています。学生時代の自分には怒られるでしょうが、ギターを仕事として生きていくわけではない以上、やはり人生のステージにおいてギターの優先度を下げなければいけない時期があるということが、今になり実感としてわかるからです。それでも、ギターを一生懸命弾いているうちに音楽がさらに好きになり、そしてギターを通し音楽について、表現についてより深く考えたおかげで、音楽を聴く際にもより深く聴けるようになりました。だから今、ギターを直接弾きはしないけれど、音楽を聴くことをクラギタ以前と比べてより深く、より大きく楽しめています。これだけでも、クラギタで音楽に深くかかわり続けた日々は無駄ではなかったのだと思います。

 とはいえ、このままもうギターを弾くつもりがないのかと問われれば、当然そんなつもりもありません。もう少し仕事や子育てに余裕が出てきたら、その時はまた、少しずつギターを弾いていきたいなと思っています。そして、音楽を聴く喜びとはまた少し違った、自分で奏でる喜びをささやかにかみしめていけたらと思うのです。大学時代師事していた尚永先生が「昔の教え子が演奏会に来てくれて、一時期は忙しくてあまりギターは弾けなかったけど、最近はまた余裕が出てきて本格的に始めたと報告してくれたりするととても嬉しい。私はギターを一生楽しんでもらいたいんですよ」といつかのレッスンで話しておられました。「演奏会は華々しいですけど一瞬ですよね。でも、ギターを楽しめるのはその一瞬だけではないのです」とも。今あらためて胸に響きます。だから皆さん、うまいへたもいいけれど、是非ギターをずっと楽しんでください。弾く楽しみ、聴く楽しみなど、楽しみ方は色々あるでしょう。その楽しみを生涯の友とできたら、クラシックギター部で過ごした時間はとても有意義なものだったと言えるのではないでしょうか。OB/OGの方々の中にも、私と同じように今はギターを弾くことから遠ざかっている方もいらっしゃるかと思います。今弾くことから遠ざかっているならば、聴く楽しみを、そして、また少しずつでも、弾く楽しみを。様々なライフステージにおいて、楽しみ方は変わる時もあるでしょう。せっかくクラシックギター部にいたのです。一生、ギターを楽しんでいきましょう。

Trackback on "クラシックギター部50周年に寄せて"

このエントリーのトラックバックURL: 

"クラシックギター部50周年に寄せて"へのトラックバックはまだありません。

Comment on "クラシックギター部50周年に寄せて"

"クラシックギター部50周年に寄せて"へのコメントはまだありません。