2010年07月10日(土曜日)
水田を吹く風
世間では各地を襲う集中豪雨が話題になっているようだが、私が仕事をしている新潟市南区近辺では逆に梅雨だというのに雨が降らない。天気予報では毎日のようにやれ午後から雨だとか大雨・洪水注意報だとか雷注意報だとか言っているが、降りそうな空をしていてもこれがなかなか降らない。なんだかんだでもうずっとまとまった雨が降らない空梅雨の状態が続いている。おかげで地面がすっかり熱くなって気温が高い中、地面を冷やす雨も降らずに湿度だけが上がっていく。実に蒸し暑い日々が続く中、農作業は当然エアコンの効いた中で行われるはずもなく、ウチの工場もまた同様で、いいかげん人が天気に辟易としてきた感がある。
そんな蒸し暑いある日、修理で自社から車で5分程のお客様のところに修理に行ってきた。時間は昼食休憩後すぐ。工場にいると蒸し暑くてただ座っているだけでも汗が滲むような時間帯だ。
お客様宅に着き、機械の修理を始める。少し経つと、そのお客様が「いい風が吹いてきたなぁ」とつぶやいた。ふと、涼しい風が吹いて連日の蒸し暑さを消してくれていることに気付く。エアコンなどなくても快適に作業ができるほどの、涼しくて爽やかな風。車でわずか5分しか行かない場所でも、これだけ違う。
そのお客様の家は、道を挟んですぐ正面に広大な水田が広がり、背中にはすぐ土手を挟んで信濃川が流れている。水に囲まれているわけだが、それだけで全然体感の気温が違う。「ここの風は水田を走ってくるから」とお客様は言っていた。水田は昔から治水や保温の役割も担ってきたと言われるが、なるほど、確かにと実感した。
地球の温暖化に警鐘が鳴らされ、CO2削減やら何やら色々言われているが、実はこういった水田のような保温の役割を担っていた農地や自然が激減し、逆に熱を溜めたり反射したりするアスファルトやガラス、エアコンの室外機なんかが増えすぎたために熱が地表に集積されてしまうことが温暖化の大きな原因だったりするんじゃないだろうか。確かにCO2は温室効果ガスだろうし、理論上それが温暖化の原因となる可能性はあるのだろう。が、もう一つ実感が湧かない。それよりも、水田を吹いてくる風の涼しさは直接的で雄弁な説得力がある。このような風が吹いてくれるのであれば、エアコンはいらない。その分エネルギーも使わなくて済むし、室外機が外に熱風を供給しなくても済む。温暖化問題ではCO2削減ばかりに目がいき、他の環境的要因は挙げられこそすれ大きな議題とはならない傾向があるが、それは少し違うんじゃないだろうか。そもそも、温暖化の原因がCO2だと決まったわけでもない。あれこれ言って、実は温暖化はただの地球の気候変動のサイクルの一環に過ぎませんでしたと、数百年後に結論付けられるのかもしれない。
そんな要素で騒ぐより、足元を見直してみるのもいいのではないか。省エネエアコンでちまちまCO2を削減して喜んでいるのも企業努力としては結構だが、国の施策としてはどうか。元々日本では水田を吹く風が夏の生活を涼やかにしてくれていた。100年かけて変えてきた環境を、また元に戻すわけにはいかないとしても、自然と共生できる環境を、また100年かけて作っていく構えがあってもいいのではないか。
100年。わずか1年足らずで首相が変わり、政策が変動していく現状では気の遠くなる時間だ。だが、1年じゃ国なんて大きなものは何も変わらない。オルゴールの一種"シンギング・バード"を作る職人さんは色褪せない剥製を選ぶためにまず50年経って色が褪せないかどうかを確認していた。国の政策で50年は待てないにしても、そのような長期的な視野は持てるのだろうか。場当たり的に勢いだけで実行され、変えられていく政治ばかりでは未来はない。
さぁ、参院選だ。
Trackback on "水田を吹く風"
このエントリーのトラックバックURL:
"水田を吹く風"へのトラックバックはまだありません。
"水田を吹く風"へのコメントはまだありません。