2009年05月08日(金曜日)
二重の虹
その時、私は勝どきのお客様の所で仕事をしていた。夕方、5時くらいだっただろうか。ふと、お客様のオフィスの中の誰かが「あっ、凄い、虹だ」と呟いた。最初は、反応が薄かった。が、その内に誰もが窓際に寄り付き始めた。虹だ。本当にきれいに七色にアーチを描く、絵に描いたような虹だ。勝どきの運河とビルの風景の上に、美しい虹がかかっていた。しかもそのきれいに七色のアーチを描く虹の外にもう一本、もう少しぼんやりとしてはいるが、これもきれいに大きなアーチを描いた虹がさらにもう一本かかっている。完全なアーチを描いた二重の虹。束の間、都会に現れたその幻想的な風景。それはまるで奇跡のように、都会の風景を自然の大きさで塗りつぶしていた。それは、都会に現れた短い幻想譚。一瞬の、短い幻想。その二重の虹が消えたの後、残された夕暮れの摩天楼には結局、いつもの都会の風景が残されていた。残照のみが照らす、人口の運河に人口の摩天楼。
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