2007年01月10日(水曜日)

パストラル

 ロドリーゴの『祈祷と舞踏』が聴きたくて、久し振りに『パストラル』をかけた。何となく、そういった鬼気迫る緊張感のある曲が聴きたかったのだ。ゆっくりとモルトを飲みながら、他に何をするでもなく聴く。音楽は昔と変わらないイメージを心に浮かばせる。闇の中で何かに追い立てられるかのように焦燥しながら、一心不乱に踊るフラメンコの踊り手のイメージ。我ながらこの曲のタイトルとスペインの作曲家という出自を考えるとステレオタイプ的なイメージだと思ってしまうが、まぁでもそんな映像が実際に浮かんでくるのだから仕方ない。相変わらず、そのような視覚的要素を強く換気させる力のある曲だ。

 さて、『祈祷と舞踏』を聴き終わり、次は『スペイン風3つの小品』を聴こうとリモコンを手にした。最初の『ファンダンゴ』の7曲目のボタンを押そうとした時、流れてきた音に手が止まった。先程までの何かに追い立てられ、駆り立てられているような焦燥感、緊張感から打って変わって、温かく、ゆったりと、牧歌的に流れてくるシンプルな旋律。このCDの最後の曲であり、アルバムのタイトルでもある『パストラル』だ。最初の1フレーズを聴いて、「ああ、いい曲だな」と思った。そして次に、そう思った自分に驚いた。これまでは、この曲は特別"いい曲"という認識は持っていなかったのだ。当然、何度も何度も聴いていたはずなのに。

 「鬼気迫る緊張感のある曲が聴きたい」と始まったCDの、ふっと緊張の解けた柔らかい音の流れの中で手が止まる。こんなはずじゃなかったんだけどな、と思いながら、曲を変えようとしていたリモコンを置いて耳を澄ます。やはり、いい曲だった。それを確かめるように、続けて3回、同じ曲を聴いた。何故今まで気付かなかったんだろうか。それとも、やっとこの曲のよさに気付けるようになったんだろうか。何にせよ、大好きなこのアルバムを聴く楽しみが、またこれで1つ増えたことになる。

 自分で弾いてみたいなと思ったけれど、まずは譜面を持っていない。あったとしても、ゆったりのんびりした主旋律とは裏腹に、ベースはかなり容赦なく細かい動きをする曲なので、聴いている印象より遥かに弾くのは難しそうだけど・・・。

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