2004年09月01日(水曜日)
時を積み上げるウイスキーのように
- ayum
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ウィスキーは生まれたばかりの時はまだ無色透明な液体で、当然味も香りもまだまだで。それが樽の中で5年、10年、15年・・・、と時を経て、潮風に吹かれながら、樽や潮風や水や空気の色や味わいや香りなんかを色々もらいながら、僕らが目にする黄金色の美しい姿になっていく。置かれる場所やら樽の木の種類やら、色々な要因が絡まって、最後に出てくる時はそれぞれ違った個性を持って。それは例えば爽やかで上品な、花や和三盆のような柔らかい香りと味、スーッとゆっくり四方に広がりながら消えていく後味のクラガンモア12年だったり、もっとトロンとしたわかりやすい蜜のような甘さと香りを持ち、舌を丸く包み込むように広がる後味のバルヴェニー12年ダブルウッドだったり、強烈な潮風の香りと、ドライで塩からく飲んだ瞬間クーッと一気に爆発するような味わいを持つタリスカー10年だったり。大雑把に言えば皆麦からできた蒸留酒には違いないけれど、生まれや10年以上の環境が、それぞれをこんなに際立った個性に変える。それは美しい時の魔法。
人間もこのウィスキーのように美しく時を重ねていくことができるだろうか。そんなことを考える。ウィスキーの熟成は一年で人間でいうところの三年分の時間だという。非常に優秀なものは8年とかでも世に出るが、大抵は12年から15年、少し早めでも10年がウィスキーが生まれてから世に出るまで熟成を続ける時間だ。人間でいうなら30才〜45才。ということは27才なんてまだ、世に問う程は熟成なんてされてないということ。例え多少は自信があったとしても。熟成されたという気持ちを自分で持ってしまうのが一番危ない。一つの戒めとして、特にお気に入りのクラガンモアの12年を一口含む。まだまだここまでの爽やかさと華やかさ、心地よい広がりを自分が身につけているなんて到底言えない。クラガンモアは正規の長期熟成ものは別格の29年ものくらいしかないし、それを飲んだことはないけれど、況んやその深みをや。時は流れる、区切られるのでなく。時は積み上がる、流れるのでなく。
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