2004年06月11日(金曜日)

スイッチOTC

 久しぶりに私らしく(?)今日はスイッチOTCのお話でもしましょう。といってもそもそもスイッチOTCが何か、というか何のジャンルの話かわからない人も多いでしょう。要は、お薬の話です。それも、薬局で買える市販品のお薬の話です。

 最近は巷にスイッチOTCと呼ばれる類いの市販薬が増えてきました。OTCとは"Over The Counter"の略で、カウンター越しに買える、つまり薬局で買える薬品一般のことを指します。「そんなん言ったら処方薬だって処方箋があれば調剤薬局でカウンター越しじゃい!」とかそういう大人げないツッコミを入れてはいけません。で、スイッチOTCとは元々は処方箋がないと買えない医療用医薬品に指定されていたものが、処方箋なしで買える一般用医薬品にスイッチされたということで、特に区別して呼ばれているのです。元々処方薬にしか許可されていなかった成分が入っているわけですから、そりゃスイッチOTC薬は効きます。通常同じ系統の一般のOTC薬より遥かに体感効果が高いです。例えば私も腱鞘炎の際よく使う消炎鎮痛成分インドメタシンを含むバンテリン、頭痛発熱によく効く解熱鎮痛成分イブプロフェンを含むイブAやベンザブロック、たん切り成分塩酸ブロムヘキシンをウリにしているパブロンSや、最近CMでよく見かける塩酸ブテナフィン配合の水虫薬ブテナロック、H2ブロッカー配合の胃腸薬ガスター10等、これらは全て元々医療用でしか使えなかった成分を含むスイッチOTC薬品です。その他たくさん、今、町の薬局の棚を見渡せば相当数のスイッチOTC薬を見つけることができます。まぁ、悪くはないかなと思います。確かにこれらの薬品は効果が高いのですから。

 とはいえこのスイッチOTC、元々処方箋がないと買えなかったということにはそれなりの理由がやはりあるもので、従来のOTC薬に比べるとやはり副作用が強かったり取り扱いが難しかったりというのはあるようです。中にはイブプロフェンのようによく効くし副作用も少ないというのもありますが、H2ブロッカーのように多少なりとも物議を醸しているスイッチOTCもあります。ガスター10等の胃腸薬に使われるH2ブロッカーは、ヒスタミンH2受容体にヒスタミンが入るのを阻害する成分の総称で、具体的に現在スイッチOTCとして出回っている成分はファモチジン、シメチジン、ラニチジンの3つです。これは従来の胃薬と違って、そもそも胃酸が出る仕組みの根っこの部分を抑えてしまうので、胃酸過多や胃潰瘍にはそりゃもう従来のOTC薬とは比較にならんくらいよく効きます。このH2ブロッカーが出てきたおかげで胃潰瘍や十二指腸潰瘍で手術をする人が激減したという事実があるくらい文字通り劇的に効きます。ですが、さすが物議を醸すだけあってこのH2ブロッカー、なかなか癖がある成分です。

 第一に、稀にではあるが重い血液障害を起こすことがあります。血小板や白血球を減少させてしまう副作用が出るケースがあるのです。これはステロイド剤や抗がん剤で現れる副作用(の一つ)としても知られている現象で、H2ブロッカーは稀にではありますがそれを引き起こすことがあります。次に、他に薬を内服している場合、H2ブロッカーは相性をかなり選びます。場合によってはどちらかの薬の作用が強く出過ぎたり弱くなったり、とかく飲み合わせにはうるさい薬です。基本的にH2ブロッカーはそれだけで飲むのがいいでしょう。

 というわけで私は余程症状が重くない限りH2ブロッカーはお薦めせず、大正漢方胃腸薬辺りに絶大な信頼を置いているわけです。とはいえまぁ、スイッチOTCといってもそこまで物議を醸しているのは実際このH2ブロッカーくらいなので、後のものは比較的安心してお使いいただけるかなと思います。まぁ、薬なんでそりゃ個人の相性ってのはありますが。バンテリンには私もよくお世話になります。ただ、スイッチOTCは元々医療用の強い成分です。よって、これが効かなかったらいよいよもって他の市販薬では通用しないと思って間違いないでしょう。スイッチOTCを試してみて症状が改善されない場合は、もう何はともあれ医者に行くことをお薦めします。

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