2003年12月18日(木曜日)

"Only1"にケリを入れろ!

 今年の紅白歌合戦、白組のトリはSMAPの『世界にひとつだけの花』だという説があるそうです。以前きよがBBSで「Number1よりOnly1」という歌詞が都合よく解釈されて、個人主義と自分勝手を履き違えた現代の風潮を無責任に後押ししてるといった主旨のことを述べて糾弾しておりましたが、私もこの「Number1よりOnly1」という歌詞には軽く小一時間問い詰めてやりたいツッコミどころをたくさん感じています。

 まず何よりも、「キサマ本当にNumber1よりOnly1の方がいいと思っているのか!? ってゆーかそっちの方が楽だとでも思っているのか!?」と問いたい。Number1なんて、なろうと思えば実は結構すぐなれます。揚げ足取るような言い方するなら、「俺はこの三人の中でジャンケン一番強いぜ!」とか言い切ってみたってNumber1はNumber1なわけです。少なくとも言葉的に間違っちゃいない。ところが、Only1となると話が変わってきます。そもそも「Number1よりOnly1」というこの歌詞、「個性が大事」だとする現代の(半ば押し付けや洗脳に近い形で与えられた)風潮から来てるわけです。とするなら、この歌詞は「何かが誰よりもよくできる人よりも、誰よりも個性的な人の方がカッコいいんだよ」と歌っているわけです。いや、多少強引な解釈だということは百も承知、半分ネタとしてこのまま突き進ませていただくと、要はこの歌詞は個性礼讃なわけです。なるほど、それ自体確かに悪くない。別に私も否定しません。ですが、無責任に個性の開拓というイバラの道に若者を送りだしてもいいものなのでしょうか(爆)。

 冷静に考えてください。個性的であるということは要は差別化であり、オリジナリティであるわけです。ではオリジナリティとは何か。それは独創性です。独創性というのはその原義的にも本来共通性とは相反します。極端なことを言うと、ある人が何か新しいことを考えたとして、その考えが他の誰かに理解されてしまったなら、それはもうその人だけの独創性ではなくなるわけです。つまり、個性がカッコいいというのであれば、そのカッコよさが他人に理解された時点で、つまり他人にもカッコいいと思われた時点で、それは既に個性としてのアイデンティティを失うわけです。私に言わせりゃ「Only1はLonely1」以外の何物でもありません。「周りから個性的でカッコいい人だと思われたい」とか考えてるヤツは、そのOnly1の意味を履き違えたただの甘ちゃんに過ぎません。

 ではOnly1を体現している人に会うためにはどうしたらよいのでしょう。・・・精神病院にでも行ってください。個性的で独創的な方はいくらでもいらっしゃいます。ただし、そこでもまだ厳しさが残ります。精神病院に入っている人達の言葉や行動にも、やはり文化圏ごとにある程度頻出するパターンというものがありますし、さらに言うなら全人類的に共通して頻出する言動や行動のパターンもあります。重度のアルコール中毒者が見る蛇の夢などはその典型でしょう。つまり精神病院に至るまで極めてしまっても、それでもまだほとんど大部分の人が真のOnly1になどなれてはいないのです。・・・あなたはそこまでしてOnly1を目指す覚悟がおありなのですか? と、そう問い詰めたいですね。

 とまぁかなり強引にここまで話を進めてまいりましたが、すいません、ただ単に「Number1よりOnly1」という歌詞をちゃかしたかっただけです(爆)。とはいえ、この歌がよくも悪くも現代社会を的確に表わしているのは確かで、その意味ではなかなかバカにもできません。私の目には今の社会ではOnly1が均質化されているように映るのです。本来意味的にありえないことなのですが。「これがOnly1だ」とメディアで流れたものを、そのまま身につけて「自分も個性的だ、Only1だ」と思っている、そんな大量生産の個性。これも思考停止の一形態ですよね。傍受した情報を何の解釈も通さないままそのまま身につけてしまうから、そもそも大量にメディアで流れているような服やアクセサリーや音楽や言葉で身を包んだところで、そんなもの他に持っている人もたくさんいるただの既製品の一つだということにすら気付かない。渋谷の街を歩いているとつくづくそう思います。そして多分彼らは意識はしてないんでしょうが、Number1っていうと例えば東大合格とか、そんな世間的なステータスしか彼らの目にはNumber1に映らないわけで、それは無理だろうという甘えが安易なOnly1志向に流れていくわけです。ただ情報を傍受するだけのスタイルに慣れきっているから、逆に葛藤がないんですね。思考を流す習慣がないから、逆に行動がすぐ流れる。周囲の世界が与えてくる情報にいちいち解釈をつけていく、その習慣もないから自分のことだけを考える。そしてそれが直接的に個人主義につながっていく。

 まぁ、数は今程多くなくても、実はそんな人間は昔からいました。それでもそんなのでも認めざるを得ないような凄い才能を持ったヤツならまだしも(ロックの世界にはそんなヤツもいくらかいる)、残念ながらそんな人間世の中に何人もいません。凡才や並の天才は、どこかで思考停止やそこから派生する個人主義からは脱出しないといけないと思うわけです。以前もこの日記で紹介した気がしますが、JUN SKY WALKER(S)の『My Generation』という曲にこんな一節があります。

 大人になる前に知るべきことがある
 自分のやり方とわがままの違いを

 個人主義も結構ですが、わがままは端で見てて見苦しいからやめていただきたい。仕事をやっているとわかるのですが、個人主義を貫いていて仕事ができて、しかも周りからも信頼されている人は、やはり自分のやり方とわがままの違いをよく理解していると思うのです。そのためには、常に世界の情報を解釈していかなければならないのです。・・・疲れますけどね、実際。

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