2003年11月01日(土曜日)
デビッド・ラッセル『バッハ作品集』レビュー
- ayum
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何故か朝から「ジョンの弾く『アッシャー・ワルツ』が聴きてぇ!」というわけのわからない欲求に悩まされていた私は、「エレナ・パバンドレオの『アッシャー・ワルツ』じゃイマイチなんだよおっっっ」という物凄い暴言を吐きながら(爆)、仕事の帰りにタワーレコードに寄ってみました。元々の目的はジョン・ウィリアムスの『セビーリャ・コンサート』(『アッシャー・ワルツ』収録)だったわけですが見事に置いてなく(泣)、仕方がないのでついでに色々とCDを見て回ってました。
すると、何とあろうことかラッセルのバッハ作品集が出ているではありませんか(っつーか今年の1月末に出てたとは・・・)!しかも曲目も危険に熱すぎる選曲。これは買わなければなりますまい。ラッセルの新譜というだけでも無条件で購入ですが、しかもそれがバッハ作品集となればもう金がなければ万引きしてでも手に入れなければならない代物です(?)。
というわけでラッセルのCDを購入し、悦に入りながら聴いていたわけですが、やっぱラッセルいいですねー。彼の、きらめくような美音(特に高音域の)や繊細かつ大胆な表現力に関しては今さら多くを語る必要はないでしょうが、今回改めて感じたのは「ラッセル、トリルが物凄いきれいだなー」ということ。そもそも彼は一音一音の輪郭が非常にはっきりとしているギタリストです。ギターではぼやけてしまいがちな早いスラー系のパッセージでも、あたかもチェンバロででも弾いてるかのようなくっきりとした音の輪郭が決して崩れません。それ故に随所できれいにインテンポでさらっと入ってくる(ただし結構複雑な)トリルが非常に美しく響くのでしょう。そしてもう一つ改めて実感したのが、ラッセルというのは音を響かせる天才だということ。潜在的ポリフォニーを持った単音旋律が、本当にあたかも複数の楽器で複数の声部が演奏されているかのように響いて聴こえたり、和音が鳴った瞬間にふわっと音が広がってくるのがとても心地よかったり。藤井敬吾先生に「これはできなくていいから、とにかく頭では覚えておいて」と前置きされた上で、「ギターという楽器は基本的には平均律の楽器だが、本当のプロは微妙な加減で音程を調節してギターでも純正律で弾く」と言って実際にその響きの違いを実演して教えられた時のことを思い出します。残念ながら私は比較する平均律の響きがないとその音が純正律なのかどうかわかりませんが(というか実際比較すればよほど耳がザルでない限りその違いなんて一目(耳?)瞭然ですが)、きっとラッセルも純正律の響きで弾いているからこそ和音があんなに美しく響くのでしょう。あんな音で弾けたらなー、と心底思います。
今回のお気に入りは何といっても4曲目のコラール『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』。きっと聴けば誰もが耳に憶えがあるであろう有名なコラールですが(ただしギター編はほとんど聞かない)、ラッセル編のこの曲は彼の豊かに膨らんでいく和音の響きと、明快にかつ流麗に奏でられるトリル、そしてクリアで明るく優しい音色がもう心行くまで堪能できる素晴らしい名演です。聴いてて本当に気持ちよかった。『シャコンヌ』はちょっと独特な感じでしたね。ラッセルは今回のアルバムではグールドばりに低音のスタッカートを多用して、短く切る音と余韻を残して響かせる音の間の落差を表現の手段として用いています(だからといってどう聴いてもラッセルの演奏がグールドに似ているわけではありませんが)。当然『シャコンヌ』の早いパッセージが続いた後にアルペジオに流れていく、前半の最大の盛り上げどころでも低音がスタッカートで歯切れよく切れていきます。低音が凄くサクサク切れるのに、上の方はむしろ逆に落ち着いて焦るふうもなくゆったり弾いているというそのギャップに少し違和感を覚えました。何しろ長調に転調する前の最後のアルペジオの部分でさえ、他のギタリストがこれみよがしに低音をダーンダーンと鳴らしているあの部分でさえ、ダーンダン、ダーンダン、ってスタッカートで切ってるくらいです。なんというか、斬新でした。長調に入ってから和音や異弦同音が続く辺りの聴かせ方はさすがでしたが、長調から短調に戻っていく時だけ他と比べてやけに焦っているようにも聴こえたり・・・。この『シャコンヌ』だけはちょっと?でしたねー・・・。あと、リュート組曲4番の『ローロ』ではトリルが上から入っていたような・・・?気のせいでしょうか。
『シャコンヌ』に多少の疑問符が付くとはいえ、『プレリュード、フーガ、アレグロ』や『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』、『リュート組曲4番』、『主よ人の望みの喜びよ』ではラッセルらしい素晴らしい演奏が聴けます。何しろ本当は『シャコンヌ』まで聴いたら風呂を入れようと思っていたのを、「せっかくいい演奏なのに風呂を入れる水音に邪魔されたら台無しだ」と風呂は後回しにしたくらいです。グールドみたいなスタッカート奏法も他では非常にいい感じです。普段音が切れてるから、和音が突然ふわっと広がった時にその感覚が凄くよくわかっていいんですよ。やっぱりラッセルは違います。
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