2001年06月02日(土曜日)

ギター演奏法の原理 - 独自の解釈も含めて

 腱鞘炎です。結構ヤバイです。原因は明らかにキーボードのタイピングですが、ギターの時のより酷いかもしれません。過去に一回左手の腱鞘炎で三ヶ月見事にギターが弾けなかったことがありますが、その時程ではないにせよ今回は両手が一気にやられているという点で凄惨なものがあります。昨晩は右手の手首から肘にかけての痛みでなかなか寝つけず、バンテリンで右手を漬けるような感じで眠りにつきました・・・。

 そして今日もせっかくの休日なのにそんな状態ではギターなど当然弾けるわけもなく、でもせめてギターに浸った気分になりたいということで先週に引き続きまたも現代ギター社に繰り出してきました。いや、渋谷まで定期で出れば池袋まで160円で行けますしね。時間は一時間ちょいかかるけど。で、CDデビッド・ラッセルの『バロック作品集』と『羽衣伝説』の譜面、新型の弱音機にA.カルレバーロ著高田元太郎訳『ギター演奏法の原理』という本を買ってきました。どうやら私もショッピングでストレス解消をはかれるようです(笑)。

 で、今日買ってきた『ギター演奏法の原理』という本ですが、これは演奏者、作曲・編曲者として、そしてそれ以上に指導者として有名なギタリストA.カルレバーロがギターの構え方から右手・左手の押弦、弾弦の基本といったいわゆる演奏理論をまとめたもので、その名は(特に海外で)有名でも意外にそれに関する著書が少なく謎の多かった『カルレバーロ奏法』を本人が懇切丁寧に解説するというありがたい書物です。今日はちょっとその検証をしてみたいと思います。

 まず、まだ私は『ギター演奏法の原理』を全部は読んでいないということを断わっておきます。まぁJAVA Servlet & JSPの本なんかに比べればはるかに読みやすいので、興味があれば皆さんも買って読んでみることをお薦めします。で、とかく中身が謎のまま名前が先立って有名になってきた感のあるカルレバーロ奏法ですが、その基本原理は「いかに手に余計な力を入れず、負担をかけず効率的にギターを弾くか」ということに集約されます。その目指すところは藤井先生と同じなのですが、実はその理想の実現方法は構え方の時点でかなり異なります。細かいところはまぁ本を買って読んでいただければいいのですが、端的に言えばギターを構える基準点を、藤井先生は左手に置き、カルレバーロ奏法では右手に置きます。その結果、藤井先生はネックを左手の自然な稼動範囲の直線に置くことでネックが体の方により、カルレバーロ奏法では肩を自然に平行状態に保ち、なおかつ右手に変な負荷をかけずに指が弦に届くようにするためにギターを体に対して斜めに構え、ネックが体の前に出るような形になります。どちらが正しいというものでもないでしょう。藤井先生の構え方では右肩がどうしても前に出てきて(実際先週の藤井先生を見ててもそうだった。ただし力が入って前に出てきているのではなくあくまでリラックスした状態で関節の位置だけ前に出ている状態)、それはカルレバーロ奏法的にはよろしくないですし、逆にネックが左手の稼動直線上から離れることは、藤井先生に言わせれば左手に余計な負荷をかけることにもなりましょう。カルレバーロ奏法の場合左手の位置を肘からの距離が7フレットまでと12フレットまでの間で等しくなるようにすることでその負荷を最小限に抑えようとしていますが、やはり左手の稼動範囲を超えていることから、ハイポジションの方はまだいいにしても7フレット以下のローポジションではどうしても手にかかる負荷が大きくなります。この辺両手とも理想の状態にするのはギターの形からして難しいのかもしれませんね。エレキくらいボディが薄ければ藤井先生の構え方そのままで右手をカルレバーロ奏法の理想に持っていくことができるのですが・・・。まぁ細かい話は今企画しているこのページの新コーナー、『ayum'sワンポイントギターTips』ででも述べることにしましょう。

 ひとつ言えることは、やはりギターの演奏法で行き着くところは「いかに手に余計な力を入れず、負担をかけず効率的にギターを弾くか」であり、たとえその実現方法が多少ことなったとしても、それはただ方法が違うだけです。そして藤井先生もカルレバーロも、構えの形を除けば言っていることの共通項はかなり多いです。指の力だけでなく場合によっては腕や肩などより大きな力を利用するとか、何時間もやみくもに練習することの無意味さとか、他にも色々です。細かいことは今回は触れませんが。そして、ギターをうまくなりたいという人はたくさんいますが、そのほとんどの人が「演奏技術」ばかり闇雲に磨こうとし、「演奏理論」を学ぼうとしません。自分が何故ここを弾けないのか、あるいは何故ここは弾けているのかを理解することは上達のスピードに大きくものをいいます。そういった自分の行動を認知することを認知科学の用語で『メタ認知』と言いますが、楽器演奏であれ文章を書くことであれスポーツなどであれ、いわゆる「うまい」人程自分が今やっていることに対する『メタ認知能力』が高いということが認知科学の実験でわかっています。そりゃそうです。例えばギター。「ここ難しいなぁ」と言って何も考えずにただひたすら反復練習で、なんとか指もなれて弾けるようになったかな、と思っても、何故自分がそこを弾けるようになったのか理解してなければ次にまた別の曲などで同じ技術を必要とする場所が出てきた時また指がその部分に慣れるまで反復しなければなりません。それは時間の無駄ですし、技術力の底上げにもつながりません。だってなんとか弾けたとしても、そこで間違った癖が身につく可能性は高いのですから。これは藤井先生もカルレバーロも言っています。「何故そこで弾けないのか」という要因を、要素に分けて分析し、問題点を発見してそこを正確に修正することが大事なのです。それができるのとできないのとじゃ全然上達が違います。まぁこの辺をちゃんと理解したい人は、ちゃんとした先生につくか『ギター演奏法の原理』を買って読んでみてください。現代ギター社の通販で買えます。まだ数冊カウンターに積んでありましたよ。まぁ奥にもあるか。

 ・・・って、タイピングで腱鞘炎になってんのに、何でこんなに文章打ってんだよ、俺!?

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