2001年02月16日(金曜日)
パラサイト・シングル考と『Tango Zapateado』
最近比較的ものを考える機会も増えているので、ちょっと折に触れ私が考えたショートショート・エッセイを数編。特に深く考えたわけでも推敲を重ねたわけでもないので、色々と手落ちもあるかと思いますが、とりあえず生のままの素材をお届けしましょう。
『パラサイト・シングル考』
一昨日から今朝にかけてと朝日新聞の朝刊でパラサイトシングルに関する特集をやっていた。数名のパラサイトシングルと思われる人達の生活と言葉を載せるというものだ。
ところで、パラサイトシングルという言葉はご存じだろうか。その定義は2/14付けの同特集によれば「成人し、仕事を持っても親元を離れず、経済的にも家事等の労力の面でも」親に依存する人ということになるらしい。私の記憶が正しければ、従来その定義に「結婚もせず」というものが入っていて、故に「パラサイトシングル(親に寄生する独身者とでも訳すのか)」という言葉が生まれたはずだ。この言葉が社会問題として取り上げられる場合は「自立できない成人」が問題になる。就職して給料をもらっても家を出ることもなく、家にお金も入れないか入れてもわずかで、家事等も親に負担をかけ楽をする成人というイメージが社会問題として取り上げられるパラサイトシングルなのだ。だが、例によって作り上げられたイメージというものは実際とは異なることも多いもので、今回の特集では病気の親を看病しながら生活費を稼ぎ、結婚する余裕もなかった人等も紹介されている。端から見れば「パラサイトシングル」に見えても、この場合実際は「パラサイト」という言葉とは程遠い。もちろん、イメ−ジ通りのパラサイトシングルももちろん取り上げられている。稼いだお金は全部自分のお金、生活費は親まかせというものだ。中には「結婚式や新居の費用も一部援助してもらえると思っていた」という人もいる。成人の自立という問題について考えさせられる。
ただ、そうしていわゆる典型的なステレオタイプ通りのパラサイトシングルを自立ができていないと非難し、問題視するのは簡単だが、私も実際自分のことを考えてみると胸が痛いものがある。今は学生である。私は仕送りをもらえていて、学費から生活費まですべてを稼ぐ必要がないという意味ではそれらすべてを自分で稼いで大学生をやっている人達にくらべればはるかに恵まれている。だが、ふと「これはどうなのだろう?」と思った。あまりに当たり前だったのだ、仕送りというものが。これは事実上「パラサイト」ではないのだろうか。「まだ学生だから」と割切るのは簡単だし、実際「今大学生です。仕送りもらって生活してます」と公言したところで別に世間から白い目で見られることはないだろう。だが、私も今年で24才。この歳ですでに社会に出て稼ぎを得ている人間は多い。だというのに私は未だ親からの仕送りをメインに生活しているのだ。それでも親元にいて毎日親と顔を合わせてられるなら今回の特集でもそう言っていた人がいるように「甘えるのも親孝行」と開き直ることもできるかもしれないが、私の場合そういうわけにもいかない。ただ金のみを吸い取っているわけだ(ちなみにこの「甘えるのも親孝行」という言について、実際親も「いてくれた方がいい」というケースも少なくない。この場合は心理学的に「共依存」と呼ばれる状態が発生していることが考えられ、この状態がいわゆるAC、アダルトチルドレンやアルカホリックチルドレンを生み出すという論も根強いので無視できない問題ではあるが、それをやり出すと長くなるのでまた別の機会があれば)。そう考えると実に質の悪いパラサイトである。
4月からは就職して働けるのはせめてもの心の救いではあるが、正直生活に余裕があるかどうかもわからず、家に金を入れることができるのかどうか・・・。そう考えると「パラサイトシングル」の自立の問題は自身の問題であり、実際には私と同じような状況にある人も含めれば一体どれだけの「パラサイト」が存在するのか・・・。私のようなケースは敢えて社会問題になるようなものではないかもしれないが、自覚の問題として、あるいはこのパラサイトシングルについての論でよく言われることではあるが「日本人特有の甘えの構造」についての問題として何処か頭の隅ででも考えておく問題ではないだろうか。もちろん自身の問題として考える分には頭の隅どころかより多くの思考スペースを確保してやるべきだ。ただし、私がこの問題を自分自身のこととして考えようとするとあまりに胸が痛いため、このエッセイも敢えて論旨を曖昧なままここで締めさせてもらう事にする。
・・・、と続けて『史上最高の演奏家は?』というエッセイを書き始めたのですが、音楽家の時代と近代自我の芽生えやら演奏家の直観による無意識とのコンタクトやらまで話が及んできて恐ろしく長くなりそうだったので止めます。他に『"遊び"と"学び"』、『教育問題と教育者の在り方』、『恋愛論ショート・ショート〜バレンタイン編〜』、『偶然の拡大』等概要が頭の中で渦巻いているのはたくさんあるんですけどね、止めときます。例によって私は気紛れなので、次はいつ書くかわかりませんので悪しからず。
とはいえエッセイを数編と冒頭で予告しておいて一編のみというのもなんだか味気ないので、代わりにたった今できたMIDIデータをアップします。曲はスペインのギタリスト兼作曲家のAngel Barrios(『大聖堂』とかで有名な方のバリオスではない)の『Tango Zapateado』。Angelは『グラナダの花』や『トナディージャ』が代表曲なのですが、今回は敢えてこの曲を。私の知る限りこの曲を録音しているギタリストはいないので実際に誰かの演奏は聴いたことがないのですが、何故か譜面を持っていて曲名がやけに気になったので一発打ち込んでみました。だってタンゴとサパテアードが組み合わさったらどんな曲になるのかって興味津々じゃないですか。で、MIDIを作ってみたのですが、そしたらまぁ明るいんだか暗いんだか、カッコいいんだか悪いんだか・・・。不思議な曲です。とにかく滑稽なリズムのオンパレード。まぁ聴いてみてください。そしてこの曲を弾きたいというチャレンジャーがもしいた場合は私まで。譜面コピーさせてあげます。そんなに指は難しくないですよ。中間部のおかしいリズムをどう取るかだけですね、この曲は。ちなみにMIDIは今日2時間程でパッと作ったものなので、どこか間違えてるかもしれませんのでご了承下さい。
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